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一瞬、青年は動きを止め、次第に顔が青褪めていった。
「やばい!遅刻だ!」
ようやく寝過ごしたことに気付いた青年は、慌てて服を着替えると、鞄を持って家を出た。
こうして、青年の慌しい一日が始まる。
青年の名は二ノ宮涼。
十年前に両親を亡くし、親戚の下で世話になっていたが、高校に上がってから、親の残した家で独り暮らしを始めていた。
その生活も二年目を迎え、今は、高校二年になっていた。
だが、独り暮らしを始めてから、ある程度のことは一人で出来るようになったが、未だに朝だけは弱かった。
その為、朝は毎日のように、遅刻ギリギリの登校で、走って学校まで通うことも屡。
涼の通う高校は、桜花町の中央にある、一番高い丘の上に建てられている。
なので、学校までの登校路は登り坂だった。
「ここまで走ればもう間に合うだろう。」
涼は、坂の中央付近まで登ると、走るのを止め、歩き始めた。
「しかし、流石に、朝飯抜きでこの坂を走って登るのはきついな。」
朝食を摂らずに走ってきた涼は、青褪めた顔で坂を登っていた。
少し歩くと、坂の途中に交差点があり、その交差点で、聞き慣れた声が、涼を呼び止めた。
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