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二十八年前…
出雲(現在の島根県)は神々が住まう国。神聖な逸話や伝記は幾つもある。この国で凛太郎は生まれた。自らの意志とは関係なく。
出雲、石見村。のどかで緑が豊かな農村。齢二十六の男はいつものように畑を耕し、仕事を終えれば農道を歩いて家へ帰る。それが男の習慣だった。だが、この日はいつものようにはいかなかった。農道の隅に籠が置かれ、その中から何かの声が聞こえる。男は恐る恐る籠の中を覗き込んだ。そこには、まだ生まれて間もない赤ん坊が入っていた。
『…えらいこった…。どがーしょう…(どうしよう)』
赤ん坊は泣く素振りも見せず、ただ澄んだ眼で男を見つめている。
『ほっとけんしなぁ…連れて帰るしか…』
男は籠ごと持ち、赤ん坊を家に持って帰る事にした。
『お~よしよし、何とも可愛い顔しとるなぁお前は…女の子だなぁ?………おや?おちんちんがくっついとるわ!男の子じゃ!……しかし可愛い顔しとるのう…ホントに男かぁ?』
男はいつの間にか赤ん坊を胸に抱いていた。
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