壱ノ説【凛太郎】

4/19
前へ
/43ページ
次へ
男は家に帰ってきた。男には一つ年上の妻と三つになる娘がいた。 『おおい!お妙、帰って来たぞ~』 『あら、あんた随分早いじゃ………どうしたん!?その子…』 『農道に捨てられてたんじゃ。こんなにも可愛い子を…酷い事をする親もいたもんだ』 『あんた…まさかその子…家で?』 『そのつもりだが?…まぁ咲に弟が出来たと思えば』 『駄目だよ!』 『な、何だって?』 『何言ってんだいきなり!うちにはねぇ、余裕がないんだよ!子供は咲で精一杯なんだ!だけぇその子は育てれん!………可哀想だけど…戻してきんさい…』 『……………!!』 男は農道に戻ってきた。籠の中に赤ん坊を入れ、置いてあった場所に籠を戻した。 『…犬や猫じゃないんだぞ…。すまん…!すまん…!……何でお前は泣かないんじゃ?…不思議な子だ…』 男は大人しい赤ん坊を見下ろし、そのまま何分か過ぎた。その時、どこからか自分を呼ぶ声がした。 『おお~い!一ノ瀬ぇ!どこじゃあ!』 『ん?』 『団や!どこにおる!?』 『おお~い!わしはここにおるで!』 『おお!団、大変なんじゃ!』 『どうしたんじゃ』 『今、石見村にお侍が来て女を拐って行っとる!』 『なんじゃそりゃあ!お妙は!?』 『…連れてかれた…!』 『!!……咲は!?あいつはまだ三つだし、連れてかれてないじゃろう!?』 『……団よ…酷い話じゃが…』 『…そんな…なしてじゃ…なして三つの子を連れてくんじゃ!!』 『おい!団!村は危ないぞ!』 団は村に走る…。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加