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ギィギィと軋む音がくすぐったい。アンティークの天蓋付きベッド、それが奏でるメロディに、じっと耳をかたむけていた。
空が白み始めるまでそれを聴くとのそりと自室に引きこもる。朝は苦手だった。光は私の大事な部分を薄く削り取って溶かしてしまうんだ。多分。すぐにまどろみに呑まれ、眠り込む。
「……セ、リーセッ」
閉じたままの瞳が、眩しさを感知し、うっすらと目を開けた。
「あたし、今日は出かけるから、もうお昼だし、光でも浴びたら」
「……ネム……眩し
「あ、遅くなるかもしれない」
「……あぁ、うん」
ネムは薄手の青いワンピースに、白っぽいグレーのカーディガン。細く白い脚は剥き出しで、なんとも肌寒い格好。くるんと、カールした真っ黒な髪が、愛らしい輪郭を飾っていた。
「ねぇ、昨日もトウヤさん来てた」
「うん、来てたけど」
「最近よく来るね、いっそ一緒に住んじゃえば」
「そしたらリセはどうするのよ」
「うーん、適当に消えるわ」
「そんなの嫌よ。行ってくる」
「車に気をつけて」
「空き巣に気をつけて」
彼女を送り出すと、リビングに座り込む。携帯電話が鳴き出した。
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