クラゲ

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サンドウィッチの具はたまごとハムだった。パンとパンに挟まれたたまごとハム。壁と壁に挟まれた私。 それにしても暇だ。テレビを消して、床に寝転がる。車の走る音。冷蔵庫のモーター音。心音。 何の気なしに手首を眺める。切っちゃうんだ。この手首を、皮膚を、血管を。流れる血液、痛み、疵痕。 私には、出来ないことだ。 ミコちゃんと私は、とあるSNSで去年知り合った。両性愛者である私に興味を持って、ミコちゃんが書き込みをくれたのが始まりだ。 私のハンドルネームは唯。ゆいでありユイであり唯だ。特に意味もなければ思い入れもない。ただ単に、思いつきでつけた名前。私にはそんな名前がたくさんある。友人の数だけ名前があると言っても過言ではないかもしれない。 リセだってその類だ。 きっと、ネムだってそうなのだろう。本当の名前はもっと他にある。私の周りは偽物の名前で満ちていた。 そんな中、私は漂うのだ。そう、まるで、海月のように。
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