クラゲ

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いつの間にか眠っていたようだ。日差しは弱まり、差し込む光は茜色に染まっている。 窓を開けると、冷たい空気が肌に触れた。冷たい。氷のように、氷水のように、ネムの手のひらみたいに冷たい。 はねた髪を撫でつけてみる。くせっ毛やだな。生まれつき、色素は薄かった。茶髪は禁止だ、と教師に注意され、理不尽に思いながら過ごしていた日々を思い出す。 私の父親は、海の向こうの人だったらしい。父親は、私と妹が生まれてすぐにいなくなったそうだ。私は父親のことをかけらも覚えていないのに、妹はよく覚えているらしく、時々小さく嘆いていた。 ―――――――― 母親は悲しそうに笑うだけだった。 別に、父親どんな人だったかなんて、私には関係のないことだと思っている。 そう、関係のないことだ。
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