クラゲ

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でも、どうして私は何にも覚えていないんだろう。どうして、妹は覚えているのに。 妹、私の双子の妹、彼女と私は、母方の実家で、祖母と母親と数人の使用人と暮らしていた。 祖父はとうに他界していて、残ったのは家とお金と未練だけ。祖母は、寂しがり屋で、よく、一緒のベッドで寝ていたのを覚えている。 既に父親はいなかった。 母親は、私のことをあまり好いてはいなかったようだ。妹は言動が年相応に可愛らしかったのに対して、私は愛想のない子供だったからなのだろう。 何をするにも、母親と妹、祖母と私、という組み合わせが当たり前だった。 だから、私はお祖母ちゃんっ子だったのだ。祖母の前では、いつもよりも子供らしく、素直でいられたような気がしている。 そんな祖母が去年亡くなった。老衰からの安楽死。そこそこ幸せな最期だったのではないかと思っている。彼女の傍には家族がいて、彼女は眠るように亡くなった。 私は、通っていた大学を中退し、フリーター生活を始めた。いろいろなことが変わり始めていた。
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