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でも、お母さん。
妹の誕生日くらい、ぼくのことを忘れて笑ったらどうだい。
お母さんが泣いてると、妹もお父さんも、そしてぼくもつらいんだ。
…まあ、ぼくがそう思ったところでむだなんだけど。
「…お母さん、死んじゃったらどうしよう」
突然、妹がケーキを食べながら、ぼそっと言った。
「死なないだろう…」
「でも、この前お母さん、自分で自分の足を刺してたよ。ハサミで」
ああ、やってたやってた。
あれはびっくりしたなあ。
「それは…つらいからだよ」
そう言って、お父さんもケーキを一口食べる。
ふーん。つらいから、お母さんは自分を傷つけるんだ。
……よくわからないな。
「それに、変な薬いっぱい飲んでたしぃ…」
「だまりなさい。今日はそういう話はしない。楽しい誕生日だろう?」
2人だけの、さびしい誕生日。
妹は全然笑っていない。
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