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白い杖を持った少年が夕暮れの街を歩いていた。
「ねえ 君」
少年が振り返ると大きなマスクを着け、赤いレインコートを着た女が立っていた。
「わたし キレイ?」
少年は困ったように
「わかんない」
と答えた。すると女はマスクを外して
「じゃあ これならどぉぉおお?」
女はニヤリと笑い、その口は耳元まで裂けていた。
「ごめん やっぱりわかんないや 僕生まれつき目が見えないんだ」
少年はサングラスをとって見せた。その目は白く濁り、何も写っていないことを示した。
「あ…」
女は徒歩に暮れたように立ち尽くし目からは涙がこぼれおちた。
「ごめん……ごめんなさ…」
「いいんだ 慣れてるから」
少年は杖を左右に振りながらサングラスをかけなおしゆっくりと去っていった。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
女はその場に立ち尽くしたまましばらくの間ぼろぼろ涙をこぼしていた。
この日を最後に口裂け女の噂はぱったり途絶えたと言う。
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