かなみ目線

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かなみ目線 「かずあき」 自然にそう呼んでしまった。 きっと懐かしくなったのだろう。 カラオケBOXで一人泣くかずあき 私に急に幸せかなんて聞いてくるかずあき 私と出会った頃のかずあきだった。 私はきっと、そんなかずあきを守りたくて、そばにいたくて、好きになったんだ。 かずあきが私を抱き締めた。 「戻ってきてくれないか…」 かずあきが私に言った。 かずあきはずっと私を見ていたんだ… でも… 「離して。私には健二しかいないの」 私は突き放すようにしてかずあきから離れた。 「わかってる…ごめんなかなみ…」 かずあきが泣いて私に謝る。 私はかずあきをあやすように頭を撫でながら言った。 「かずあき…私ね、最近自分の気持ちが分からなくなってたの…。 カラオケで一人で泣いてるかずあきを見てから、かずあきのことばっかり考えて… もしかして私、けんちゃんじゃなくてかずあきのこと好きなのかなって思った…。 きっと、かずあきのことは今でも好きだよ?」 「じゃあ…」 かずあきの言葉を遮って続けた。 「でも、それは人として。 私、かずあきの人間性が好きなの。 かずあきは大好きな先生だよ、尊敬してる。 けんちゃんは…私がいなきゃだめなの。 私もけんちゃんがいなきゃだめなのよ。 きっとけんちゃん、最近私がこんなだからすごく心配してると思うの。 でもなにも聞いてこないのよ、優しすぎるわよね。 だから…かずあき… ふつうの生徒と先生に戻りましょう?」 私がそう言うとかずあきが軽く深呼吸した後に言った。 「そうだな…俺、がんばるよ。 お前にとって良い教師でいれるように。 でも…」 かずあきが私を抱き寄せた。 「今だけ… 最後に少しだけ… そしたら俺、もうお前にとってただの教師に戻るから…」 そう言って、かずあきは泣いた。 「かずあき…」 私はかずあきを抱き締めた。 最後… 本当にこれで私たちのいけない放課後は終わる。 「かずあき…」 がたっ 後ろで音がした。 「かなみさん…」 健二だった
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