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ふと気づくとかなみがドアの外にいた。
「かなみ…」
名前を呼びかけようとして思いとどまった。かなみはもう吉川のものだ。
だけどかなみのあの心配そうな顔が目に焼き付いている。
そう、俺はまだかなみを忘れられていない。
守るべき家庭も、仕事もあるのに。
だからかなみへの想いは断ち切らないといけないのに。
俺の幸せの為にも、かなみの為にも俺はかなみを忘れなければいけないのに。
吉川の為にも。
そうしてもがけばもがくほど、俺はかなみを夢に見る。
―かずあきっ
そう言って笑う彼女を今は夢でしか見られない。
全く、娘ほど歳の離れている女にこんなに惚れてしまうなんてな…
ふっと自嘲気味に笑って、俺はそれまで歌っていたかなみの好きだったアゲハ蝶の曲を止めてカラオケボックスを出た。
なんで、カラオケなんて来てしまったのだろう
どうしてかなみに見られてしまったのだろう
どうしてどうして…
かなみのことを考えていると自己嫌悪で、自分の存在すら呪いたくなる。
俺はタバコを一本吸ってから車に乗り込み、家路についた。
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