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微妙な空気の中で語られた弁天様の説明を纏める…
まずこの訳の解らない保健室…いや、先程まで走り回っていた懐かしの学舎も含め総ては魂の素子が集う空間、アカシックレコードの中に創り出された虚像なのだ。
何故そんな物が築かれたのか…ここは魂の海だ。
そこへ有無を言わさず放出された俺達は…
直後、魂単位で散り散りにされてしまったのだ。
結果、生身の俺は魂の欠片で満たされた空間世界から調和を乱す異物として圧殺され掛けた…乳白色の空間に浮かんでいた時がそれだ。
と、そのピンチを救ってくれたのが既に魂の洗練を済ませ帰依していた園部カスミである。
次の誕生を待つ身の彼女は懐かしい魂の波長を感じ取ると、既に融合していた筈の空間から強引に分離し…カスミ的に俺との繋がりが最も強かった場所、高校の保健室を、俺の記憶から具現化させ一種のバリアフィールドを創り上げたのだ。
この世界の住人…彼女にしか出来得ない荒業である。
余談かも知れないが…
《繋がり》と言われてみると…彼女と会話を交わしたのは稀に顔を出した保健室のみだった事を思い出した俺だ。
話を戻し…
その直後、やはり別の所で知人の助けを受けた弁天様が駆け付け事態は落ち着くかに見えた…が!物事、上手く行かないのが世の常である。
単純に保健室だけ出現すれば事は楽だったのだが…俺の記憶を元にしている事が要因となりフィールドは爆発的に肥大化…
結果、学校全体という巨大な虚像を創り上げてしまったのだ。困ったのは弁天様である。
云わば巨大な夢の産物を維持する為に身動き出来ない状態に陥ったのだ。
俺も弁天様もアカシックレコードの中で空間からの侵蝕を耐える為には憑依状態に戻る必要があった。
そこで急遽、カスミが俺を弁天様の許へ誘う役割を担う事となった訳だが、そこにも問題があった。
元々、アカシックレコードで魂の素子まで帰っていた彼女だ。虚像空間だからこそ生前の姿を保っていた。
そんなカスミの存在を根底から否定する様な事があれば彼女は個としての存在を維持する事が出来なくなり、元の状態…魂の素子へと返ってしまう。
そうなるとバランスが崩れフィールドが一気に崩壊する危険があったのだ。
何故ならば、この巨大な虚像を維持する為には、弁天様のエネルギーと俺の記憶…そして何よりカスミの想いが必要だったからだ…
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