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所は変わり…
ズルズルと何かを啜る音が手狭な室内に響く…
家具の少ない部屋の中央に据えられたシングル用の小振りなテーブルを挟み親父こと冴木功人と…その妻、多枝子が山盛りの素麺を食らっているのだ。
「あの子ったら遅いゎねぇ…」素麺を掬う手を止めずに呟くエプロン姿のお袋に…
「なに!心配するなよ。アイツもイッパシの男になった…君の言葉だろう?功太を信じろ!」と…コチラも箸を止めずに言葉を返す親父だ。
「そうよっ!我が子を信頼しないでど~するのっ?ここは待ちの一手に尽きるわっ!」と…
突然、顕現化したシヴァが夫婦の会話に割って入る!?
彼は言い様で山盛りの素麺、そのほぼ全てを箸で挟み上げると汁にも浸けずにバクりと一口で平らげてしまった!?
「貴様っ!またかっ!?」怒号を上げつつ立ち上がる親父。
と、細目の身長2メートルは…「あ~っ!?サラの気配が近づいて来るわよっ!?」まるで…猫騙しでも打つかの様に親父の背後を指差した!?
釣られて指差された扉を向いた親父だが…
玄関を10秒程凝視したものの何も起こらないと察した所で…こめかみからビキビキと音を発てながらシヴァを向き直る。
が…そこに居るのは黙然と座るお袋だった。
食うだけ食って逃げる様に解顕化する破壊の神である…
「全く!君がシッカリ管理してくれないとっ!」と、怒りの矛先はお袋と向かったが…
「あらまぁ!そうなのっ…?」独り言とも取れる言葉を呟きながら立ち上がり…鼻唄混じりで玄関の扉を開いたのだった。
飛ぶといった概念がこの空間に当てはまるのか定かではない…が、赤みがかった満天の夜空を飛ぶ様に移動する。
とりあえずの目的地はシヴァの居所。
理由は単純、弁天様の能力で大体の位置が確認出来たからである。
俺達は直径2メートル程のフィールドに包まれている為、外界からの刺激と言えば視覚のみ…風も温度変化も感じられない。その為にか時間の経過は全く感じられずにいた。
そんな時だ…
『見てみるがよい…』突然、頭に響いた声で我に返った。
余りの暇さに呆け捲っていた俺だった…
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