はじまり、はじまり。

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ひかるはというと。 一人で学校を抜け出して廃墟ビルの屋上に寝転がっていた。 こんなに栄えている東京の真ん中で廃墟ビルがあるなんてほとんど有り得ない。 大抵は取り壊されてしまうか、そのまま貸家として新しい会社が建つか…なのだが。 珍しくこのビルだけはどんなに古びても壊されることも、どこかの会社が引き取ることもなかった。すると、遠くで鳥が、ぴぃーっと鳴いた。 甲高く、どこまでも確実な響きを持って。 ひかるはぼぅっと空を見つめる。 どこまでも続いていそうな高い空。 本当は空の向こうが宇宙なんて嘘で、限りなく空が続いているんじゃないかと考えるくらい。 だけどそんな他愛ない事を考えてもその合間に挟まれるのは、朝のあの出来事。 あの少女の涙が頭から離れない。 目をつむり、むーっと眉間にシワを寄せる。 消えろ、消えろ、消えろっ!! どんなにそう願い、思ったとしても鮮明に繰り返される。 (夢だよ。そう。あれは夢だったんだ) 無理にそう言い聞かせることにした。
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