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ちくたく、ちくたく。
ちくたく、ちくたく、ちくたく。
時計の針の音が、蒸し暑い教室に響く。
机の上に置いている紙に向かって動かしているシャープペンシルのかりかり、という音がたまに動くくらいで。
あぁ、それと蝉の鳴き声。
それぐらいの音しか教室に存在しなかった。
ここで新たな音が生まれる。
「はぁ~…」
とある男のため息であった。
それに反応してか玲菜のシャープペンシルの音がふと止まった。
男は両手で頬を支え、重力に逆らおうとしない顔はそのせいで頬が吊り上がった変な顔に変わっている。
大抵の人はこの顔で笑うが。
少女だけは、違った。
―ばんっ
「あぁもう鬱陶しい!!」
机を勢いよくたたき付けて立ち上がったのは、男のため息に耐え兼ねた少女、玲菜。
「何なんですの!?さっきからこっちは黙って貴方の課題をやっているというのに!!」
すると男、雅は頬杖を解いて手足をばたばたと駄々をこねるようにしてみせる。
「だぁって暇なんだもん」
ぷぅ、と可愛らしく雅は頬を膨らませて上目遣いで見てくる。
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