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その時だった。
遠くから激怒した声が飛んだのが聞こえた。
いや、それは飛んだ、というより響いて地面を揺るがす程の声。
何かに激しく激怒している声に気付いたひかるは、ぱっと顔を上げて校門から顔を覗かせた。
そこには、校舎と同じく真っ白な制服を橙色に染めて隣の男性に罵声を浴びせる玲菜がいた。
それを確認するなり、ひかるは大きく腕を振りかざし、横に振って表情を和らげた。
「玲菜ちゃーんっ」
すると玲菜はこっちを向いて微笑む。
さっきの怒っていた表情とはまるで別人のようだ。
たたたっと小走りに駆け寄って来る。
「別に来なくてもよろしかったのに…」
「一人で帰るのって寂しいんだよ?」
すると玲菜は口元を微かに押さえて笑った。
するとひかるの言葉を聞いた愛流が頭の触角に似た髪をぴーんっと奮い立たせる様な勢いで叫んだ。「一人でって何!!?あたしがいるじゃないですか!!」
そう叫んではいるがやはり玲菜には見えていないらしく、淡々と続けた。
「さ、ひかる、帰りましょう」
ひかるはこくんと頷いた。
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