はじまり、はじまり。

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*** そう遠くない過去の話。 二年、いや、一年くらい前のことだろうか? 新任の先生は教室に入った途端に生徒からの歓声を浴びる。 端整な顔立ちだからだろう。 しかしそんな事に興味のない玲菜は自己紹介している間も、上の空だった。 その日の放課後。 授業も終わり、ひかるを待たせてはいけないと手早く道具を鞄に詰め、教室を出ようとした時。 『上之宮―…上之宮玲菜はいるか?』 教室の扉から顔を出して彼女の名前を読んだのは、新任教師、鷺原(さぎはら)雅であった。 『―……はい』 静まり返る教室に玲菜は冷静に答え、立ち上がった。 すると彼は視界に玲菜を捕らえ、にこっと笑いかけた。 『ちょっとだけいいかな?』 『……………はい』 早く帰りたいのだが…。 先生だからそんな事も言えるはずが無く、玲菜はしぶしぶ雅の後をついていった。
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