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ついたのは雅の担当、英語の特別教室だった。
専用の鍵を使い雅は扉を開ける。危機感を覚えなかったのは、同性愛者だと分かっていたせいだ。
玲菜は表情一つ変えず、招かれたまま教室へと入る。
埃臭いそこで煙たそうに咳をすると、雅は悪いね、と言う。
不満ながらも大丈夫です、とだけ言い、用件を聞いた。
『それで、私に何の用件でしょうか?』
特別授業の勧誘だろうか?
それなら全教科やっている。
今更やるか?なんて遅れていると思うけれど…
すると、全く予想だにしない答えが返ってきた。
『ひかる―…曾根川ひかるを知っているだろ?』
にっこりとホストみたいに微笑みかける彼。
いきなりの友人の名前に、玲菜は目を剥くしか出来なかった。
『知っていますけれど…』
するとひどく嬉しそうに。
ひどく切なげに笑った。
そうか、とたった一言だけ彼は零した。
そこで、とある質問をぶつけた。玲菜が先程から気になっていた質問だ。
『…ひかるとはどういった御関係ですの?』
すると彼は、あぁ、と言い少し声量を低く答えた。
『………兄貴だよ。一応』
その表情からはそれが真実だと信じるしかなかった。
嘘だ、と言えなかった。
これが演技だなんて、思うことはなかった。
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