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ひかるはそれに聴き入りながら、雅は頬杖をついて不満そうな顔をしていた。
玲菜は細く白い喉をこくり、と動かしてまた紅茶を飲んだ。
「…二人は気まずい関係なんだと思いましたの」
瞳を伏せ、赤い唇をしなやかに揺らす。
「そうでなければひかるだって、雅の事は私に話してくれたでしょう?」
「…………うん」
離婚した。
自分には兄がいる。
父が引き取った、なんて言いにくかった。
親友だから、余計に。
小さくなってひかるはミックスジュースを刺さったストローから吸い上げた。
だけど、何故?
ひかるにはまだ一つ疑問が残っていた。
雅に向き、ひかるは心の底から問う。
「何で冷たくしたのっ?」
あの頃の兄とは分からないほどの変形ぶり。
玲菜に聞いてひかるの安否を確認し、ちゃんと覚えていてくれたのに。
その話からは昔と変わった所なんてない。
鮮明な記憶と同じ、優しくて尊敬できる兄だった。
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