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しばらくして、アナウンスが流れはじめた。
『―…』
遠く聞こえる機械音に変換された声を流し、ひかるは電車に乗る準備を始める。
今日は平日なのにあまり混んでいなかった。
でもやっぱり人が多いのは変わりないが。
そして遠くから電車の風を切る音が聞こえてきた。
次第に風が吹いて、髪を乱す。
周りの女の子は髪を押さえて風に対処する。
遠かった電車も近付いてきて、そろそろ電車はブレーキをかけ始める頃。
ひかるからほんの少し離れた所にいた少女。
とても可愛らしく、今時の女子高生で長い髪がとても良く似合っている。
その娘が。
不意に前へ一歩踏み出した。
危険を避けるために作られた線を越えて。
(―…へ?)
そんな事、普通はしない。
どんなに急ごうとも、自分の命は大事だから。
しかし、その娘は一歩踏み出した線の向こうで朧げに遠くの天井を見上げている。
それは、空を見上げているようにも見えた。
だが、危険は危険だ。
ひかるは手を伸ばした。
「あの!!危ないですよ!!?」
すると彼女はゆっくりとこちらに振り返る。
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