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「………何で……?」
ぽつりと呟く。
だがひかるの言葉なんて聞こえていないと、電車のドアが開く。
雪崩込む、人々。
取り残されるひかる。
訳が、分からなかった。
少女は引かれ、死んだはず。
なのに人々は―…?
はっとして辺りを見渡す。
そしてひかるは一人の男性へと駆け寄った。
その人はひかるの隣で、真横で電車を待っていた人だった。
彼なら見たはずだ。
「あの…っ!!さっき、女の子が……っ!!」
「………?」
「電車に引かれましたよね!!?」そう口走ると彼は、驚きを隠せない様子で目を剥いてひかるに言った。
「何言っているんだ?」
そう言ってひかるを軽蔑するような目で見やり、小走りで電車へと駆け込んだ。
ひかるはへたり、と座り込んでしまう。
「………何で?」
そっと目線を落とす。
視界に入ったのは、血を浴びて真っ赤な服…
ではなく、いたって普通の服だった。
血なんて、跡形もなかった。
いや微塵にも残っていなかった。力の抜けた足は驚きで奮い立ち、ひかるは服の色んな所を見る。
確かに血がついた。
頬にも。
頬に触れてその手を見る。
だけどやはり血の跡はなかった。呆然と立ち尽くすひかる。
(どうゆうこと…?)
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