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誰かの声と妖怪の凄まじい咆哮が家中に響き渡る。少女にはその時、何が起きたのかわからなかった。
それもそのはず、少女は恐怖で目を開けることが出来なかったからで、まぁ、目を開ければいい話なのだが、少女は出来なかった。
「もぅ、開けても良い」
少女の耳に自然と流れ込んでくる、ややテノール気味の男の声が少女の不安を取り除き、少女の目を開けさせた。
「・・・。」
少女は言葉を失った。そして。
鮮血の水溜りに浮かぶ両親の頭部を拾い上げると抱きかかえ、うずくまった。
「泣かぬのか?」
男は懐から扇子を出し口元に当て、少女の前に屈んだ。
少女くらいの年の子供なら、泣き言の一つや二つ嘆くと思っていたからだった。
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