一一第二幕

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「武田のおっさん…やっぱり…」 協力しようと動いた政宗に信玄の斧が立ち塞がる。 「…手を出すなと言った筈だ…独眼竜…」 「……」 「…ふっ…今の幸村が儂の力を超えていようとはな……面白いわ…」 斧を構え直すと、黒い炎のような気迫に包まれた幸村に目を向ける。 「……」 「…」 (相手は幸村に扮した敵…そう思い戦えば勝てる…… それなのに、なんじゃ…? この切るのが惜しいというこの感情は…) 「…武田信玄は勝てるのだろうか…」 「勝てる訳ないじゃない」 と佐助とかすがと同じく戦場を見ていた黒華が口を開く。 「相手は私の力と悪来の力を与えた幸村だもの 素早さと攻撃の威力は人に非ず、傷を負う事はまず不可能 それに…傷を負ったとしてもすぐに立ち上がれるし 無敵に近い幸村に勝てると思って挑んだあの虎のおじさん……本当馬鹿ね…ふふふっ」 「貴様っ…!」 「かすが」 今は落ち着いた方がいいと目線で佐助に言われると、かすがは納得の行かない表情のまま口を閉じた。 「あんたはそう言うけど…そうかな? うちの大将はあんたが見て言っているよりも強いからね」 「……そう、私はそんな風には見えないけど」 「ははは…そうかい?」 黒華の素っ気無い返答が返され、佐助は苦笑いを浮かべた。 次に今再び刃を交わり合っている幸村と信玄に真面目な表情になり目を向けた。 「……」 (あの大将が押される程旦那は強くなった…と言う訳か …確かに素早くもなったし、攻撃も強くなった…… でも……旦那自身が戦っているようには感じない ……黒華と悪来…… あいつらが引き出した力が旦那の代わりに戦っている…のか? だとしたら、旦那の意識は今…) 佐助の眉間にしわが寄る。 (蝶姫はいる…後は動きを封じればいい……だが、この素早さでは……どうすればいい…) ゴッ…! 「!!」 突如、自分の腹部に重い音がし、佐助はぐらりと体制を崩し黒華から離れてしまった。 「ごめんなさーい ……手が滑っちゃった」 「くっ…」 「何をしている!佐…っ!!」 かすがも同じように悪来から腹部に肘打ちされ、よろけてしまう。 二人は佐助とかすがに解放されるとこちらを振り向き 「もう待ち切れないの じゃあね~」 フッ一一。 二人が「待て」と言う前に、黒華と悪来は姿を消した。
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