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え、
マジで俺ら今から漫才すんの?
「今回は2番目か。
決勝でやったの覚えとる?」
「…忘れるわけないやろ」
そう、俺は忘れていない。
あの練習を。当日の空気を。
そして屈辱を。
夢の中とはいえ、結成10年を超えてしまった俺らに再び訪れたM-1の舞台。
手の平にじわっと汗をかく。
舞台袖にいけば、モニターには声無しでU字工事が映っとる。
「貴、あれ見て」
藤原が指差したモニターの片隅には、勝者だけが持つことを許される優勝トロフィーも映っていた。
「今回の夢魔はあれや」
「!?わかっているんやったら、
わざわざ漫才せんでも…!?」
「俺、もうやっとんねん。
無理やり奪おうとしたら、審査員席の奴らに阻止されたわ」
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