【荒唐無稽1 -藤原-】

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黒い重そうな扉。 ドアノブがなく、 周りの壁も見当たらない。 薄暗い何もない空間に扉だけが浮かんでる。 「…ここはどこや?」 何も聞こえない無音状態に不安を掻き立てられ、今まで感じたことのない渦渦しい空気に包まれている。 「やめてくれやぁ~。俺、ホンマ苦手やねん、こんなん感じ」 ボソッと呟いたが、 もちろん誰も答えない。 「誰かおらんの~? お~い! …貴ちゃぁーん!」 寂しくて愛しい相方の名前を呼んでみた。無論誰も答えない。 となると、この扉か。 一歩近づき、ドアに触れる。 冷たい陶器のような触感。 「開けてみよかな… ってドアノブ無いし!」 あぁ、悲しい一人ツッコミ。 ……ッ……ウ…… …なんか聞こえる? 扉の向こうから聞こえてきた。 「誰かいるんか…?」 俺は耳を扉に当てて 聞き耳を立てる。 「グスッ…みんな嫌い …みんな嫌い…」 か細いまだ若そうな女の子の声が…泣き声が聞こえた。 -
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