【荒唐無稽1 -藤原-】

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誰かが泣いてる… でもどこに…? 声は聞こえる。 でも扉は前から見ても後ろから見ても、一枚の板があるだけ。 「なぁ、誰かおるんかぁ?」 とりあえず扉の中にいると思われる人物に声をかける。 『…誰!?』 「えっと、俺は藤原っちゅーもんやけど…君は?」 『来ないで!』 「来ないでって、入れへんよ。 ドアノブついてないんやもん。 なぁ、ここどこ?」 『ここは…誰も来ない私だけの世界。なのに何故あなたいるの?』 しらんがな。 『とにかく出てって! 私の顔を見ないで!!』 「うわっ!」 もの凄い風が開いてもいない扉から吹き荒れて、体ごと宙に浮く。 そして… はっと目が覚めた。 夢… 当たり前や。 夢でしかあらへんわ。 やばいっ! 今日の仕事は大阪で、 9:38の新幹線に乗らなあかんねん! 俺は飛び起き、支度を始めた10分後にはさっきの夢のことなんかすっかり忘れていた。 でも、 これはただの夢ではなかった。 俺の苦悩の日々の始まりだったのだ。 続
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