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「前田が…、前田 沙希(サキ)が昨晩、亡くなったそうだ…」
「…えっ?」
教室中がざわつき始めた。
「な、何で死んだんですか…?」
クラスの誰かが重々しい空気の中、口を開いた。
「分からん…。昨日の夜遅くに前田の家から連絡があったんだ。娘が帰ってこない、と…。それですぐに警察に捜索願いが出された。そして見つかったんだ。前田の遺体が…」
教室のあちこちですすり泣く音が聞こえる。
だが浩一は泣く気にはなれなかった。
正直、前田という生徒がどんな生徒なのかも覚えがなかったのだ。
「何で、グスッ、死んだんですか?沙希は…?」
クラスの女子が担任に向かい質問した。
「分からん…。先生も前田の遺体を見ていないからな…。だが警察は殺害目的の通り魔事件だろうと言っている。暴行のあとが無いものの、顔以外の全ての場所がズタズタになっているらしい…」
一段とクラスの雰囲気が重くなる。
「みんな…前田の冥福を祈れよ。今日は各々、帰っていいからな。保護者の要望で今日は臨時休校だ」
そう言って担任は教室を出ていった。
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