もう物語りは始まっていた。

4/28
103人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
中年の男の首から不自然なくぼみが消えた。 同時に男の身体が落下を始めた。 男が宙吊にされていたのはビルの五階程度の高さだ。 即死はしないだろう。 だが、決して『生きて』いられる高さでもない。 グシャリと、濡れた雑巾が落ちるような音がした。 落ちたのはむろん名も無き中年の男。 少年は生きているかなど確認はしなかった。 これからやってくる救急隊員も、搬送される病院の医師も、すべて彼と同じく依頼を受けた人間なのだから―――――
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!