もう物語りは始まっていた。

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「あら、子飼も褒めればよく働くものよ?」 「僕好きだよ?怜奈さんのそういうはっきりものを言うところとか」 皮肉だ。 全くもって皮肉だ。 怜奈は気付かないのか気にしていないのかかまわずに話を続ける。 「おじい様から出された課題は後三人。『それ』を始末してしまえば私はまた次の段階に進める。 最初はおじい様に連れられて一緒に課題をこなすのが貴方だと知ったときはどうしようかと思ったけどおじい様のお眼鏡にかかるだけのことはあったわね」 どこまでも傲慢で上からの目線。 それがいつもの怜奈の話し方だ。 それを彼女らしいと捉えるか、生意気な小娘だと捉えるは彼女と話した人間によって異なるだろう。 「まあ、可愛い孫娘に危ない橋を渡らせるのに適当な男はあの人も選びはしないでしょう」 「それはそうね。それでは私はこれで失礼するわ。次の実行のデータが揃い次第連絡するわ。そうね・・・三日後くらいかしら」 席に座っていたので脇にどけてあった白を基調としたワンピースに合わせた白いつばの大きな帽子をかぶりなおして怜奈は席を立つ。 「ここは私が払っておくわ。ほかに何か頼む?」 「いや結構。僕はもう少しゆっくりしてから帰るよ」 「そ、じゃあまたねヒカル」 彼女は振り返ることなく店を出て行った。 後ろには何もないように。 自分には前しか存在しないようにも見えた。 彼女が完全に見えなくなってからヒカルは明るい表情のままため息をついた。
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