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私は、『夢十夜』の前に立っていた。
準備中の看板を無視して中に入る。
『あーまだ仕込み中だよー開店は5時からね!』
『セッタ!この新聞!』
私の声を聞いてセッタは顔を上げた。
『あんたか…パイポ!パイポー』
『だぁから、でっけぇ声出すなっていったべな!だいたいおめぇさんは何遍言われりゃ解るんでゃあ?』
奥から出てきたのは、お店に立っている時とは全く違うパイポだった。
『あぁ…貴女でしたか。失礼しました、体調はどうですか?』
『えぇ、まぁ…それよりこれ!新聞!』
『あぁ、あの馬鹿息子捕まったみたいですね、馬鹿な事はしちゃいけないですよ』
『まったくだ…世の中、真っ当に生きなきゃビールが旨くないからな!』
『あなたたちがやったの?』
パイポは笑いながら
『さぁね…セッタの言う通り、お天道様が見逃さなかったのさ』
『仕込みに入るかね、パイポさんよ』
二人は一体何物なんだろう…
私は、この二人が気になってならない。
私がその場に立ち尽くしていると…
『何やってんだ?暇なら手伝って行けよ…ショコラ』
とセッタ
『ショコラぁ?それって私の事?』
『名前を見てすぐ決めた』
とパイポ
『…』
『どうした?』
『パイポって意外とセンスない』
私は店を手伝うことにした。
この二人を見ていれば私は、いろいろと勉強になるだろう。
小説家志望の私には、派遣社員の事務仕事よりは向いている。
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