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誰にも言えない秘密がある。
春香は握りしめていた携帯を机に置くと溜息を漏らした。
純とは先程別れたばかりなのにもう次に逢える日のことを考えている自分に気付き、自嘲的な笑みを浮かべる。
近頃、純の居ない時間はいつもこんな風に情緒不安定なのだ。
別れた時刻は午前6時28分━
この時間になると、どれだけ名残り惜しくとも春香には家へと帰らなければならない理由がある。
春香には家庭がある。
家へ帰ると可愛い我が子が春香を出迎えてくれる。
「おかえりぃ。」
満面の笑みで駆け寄って来る明日香を抱きしめて鞄を床の上へ置く。
「ただいま。」
もう一度強く明日香を抱きしめた。
この天使の為だけに春香は家へと帰る。
夫は大恋愛で結婚に至ったが今となっては空気も同然のように扱われている。それでも春香は夫を嫌いになった訳ではない。寧ろ、夫を壊れそうな程、愛している。
しかし今、春香には純と言う秘密の恋人が居る。
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