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骨盤も平たく横に広がり、地に立ちやすいよう足も下向きに生えている。まるで人間に狼の顔と毛をつけたような、狼男という言葉がしっくりくる異形の生物であった。
「この地に住まう火の精よ、我が声に答えよ」
そんな化物に臆することなく、少女は呪文を紡ぎ始めた。
それを聞くや否や、化物は少女に向かって人間離れした速度で駆け出す。
「我、世に留まる穢れに浄化の炎を欲す!」
彼女が唱えている術は火の精霊の力を借りて一柱の高温の火球を喚び出し、対象者を炎熱によって殺傷する術である。
(よし!)
対個体火系攻撃呪文を唱え終え、左手に十分な魔力の集中を確認すると、一直線にこちらに向かってくる相手を見据える。そして、その手を相手に向け、声高く叫ぶ。
「ファイヤーショット!!」
しかし何も起こらなかった。
「……あえ?キャア!?」
何が起こったのか少女が把握する前に、怪物は間合いを詰め飛びかかった。
肉食動物の鋭利な牙が、白く華奢な喉笛を噛み砕こうとするまさにその時、
「波刃!!」
覇気の籠もった青年の鋭い声が響き渡った。刹那、突風が吹き荒れ、化物の首が吹き飛んだ。
物となった体と頭部の軌道が逸れ、少女の少し離れた位置にドサッと落ちる。するとその体が灰となり、空気中に霧散してゆく。
「ふぅ……大丈夫か?天見」
声のする方を見れば彼女と同じ色たがデザインが異なるブレザーに、これまた同じ色の長ズボンを履いた人物が立っていた。優に一メートルを超える大剣を携え、彼女の元に歩み寄る。
「まぁ、お前ならあの程度の奴は何ともなかったかもしれんがな」
その声色は少し前にあった通信のそれであり、彼の胸ポケットには彼女と同じ校章と細く青いラインが一本走っていた。それは彼がバルトギア国立魔術防衛学校戦士育成課程一年生であることを示している。
「そんなことないよ。タイチョーのお陰で助かった」
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