1人が本棚に入れています
本棚に追加
僕の旅は続きます。
次に行った村は、『花の村』でした。
そこでは村中に花が咲いていました。
そして、そこの村人は、みんな花のように満開の笑顔でした。
僕は綺麗な花が満開に咲いている家に行きました。
そこには一人のおじいさんがいました。
そのおじいさんも笑顔でした。
「どうしてそんなに笑顔なんですか?」
おじいさんは答える代わりに質問をしてきました。
「どうして花はこんなに綺麗に咲いてると思うかい?」
僕は少し戸惑ってしまいました。
「えっと…毎日ちゃんと水をあげてるから?」
するとおじいさんは笑いながら答えてくれました。
「花がこんなに綺麗に咲くのはね、
散る時のことなんか考えてないからだよ。
人間だって同じさ。
先に待つ結末に不安を持ってても輝けない。
わしが笑顔なのはそういう理由だよ」
おじいさんは僕の頭を撫でてくれました。
僕は思ったことを言いました。
「花は散るときも凄く綺麗です」
するとおじいさんはそれに答えてくれました。
「花の散る姿が美しいのはね、
次の春に咲くことの期待で、胸を踊らせているからさ。
次はもっと綺麗に咲こうって、希望に溢れてるからさ」
僕は、きっとおじいさんはその言葉の後、こう続けるだろうと思いました。
「人間も同じさ。失敗しても、また頑張れば良い」と。
しかしおじいさんは何も言いませんでした。
何も言わずに笑顔で花を見つめていました。
おじいさんは、花が散ることを失敗とは言いたくなかったのかもしれません。
僕はそっとおじいさんの家を出ました。
僕の旅は続きます。
最初のコメントを投稿しよう!