89人が本棚に入れています
本棚に追加
それだけ言うと玲菜は手をひらひらさせながらその場を去っていった。
丁度、入れ替わるように愛流が両手にジュースの缶を持ってやってきた。
「ごめんごめん。ちょっと道に迷っちゃってさ……この宇宙船、無駄に広すぎだよね。あ、これジュース」
愛流が缶を差し出すと、ひかるは困った顔を見せた
「いやボクは……」
「いーのいーの!もう友達なんだから遠慮しないでいいからさ!」
「炭酸、ダメなんだ……」
愛流は出した手を静かに引っ込めた。もう片方の同じ銘柄のジュースが握られている手も出すわけにはいかない。
『まもなく、当船はバラックスへと到着致します。ご乗船のお客様は席にお戻り下さいませ。繰り返しお伝え……』
「あ、もう着くみたいだね。じゃあ私は向こうだから……。着いたら一緒に行動しようね!」
船内放送に救われた愛流は両手に缶を持ったまま、小走りで去っていった。
ひかるはその姿を見送り、自分の席へと戻る。
「いよいよかぁ……」
既にひかるの胸は不安と期待で破裂しそうな鼓動を打っていた。
船が動きを止めるまで、ひかるは確かめるように、その鼓動を右手でしっかりと感じた。
最初のコメントを投稿しよう!