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しばらくして一人、また一人とバスに乗り込む。船内で見かけた顔ばかりだった。
最後に玲菜が乗り込むと、ドアが閉まった。人数は十人を越えるかどうかといった所だった。
ひかると愛流のように隣同士に座っているのは他に一組。他は皆、距離をあけている。
「なんか……空気重いね?」
愛流が耳打ちをする。
「仕方ないよ。お互いに知らない人同士なんだし」
ひかるもまた耳打ちをする。
それからしばらく車内に沈黙が続く。ただ不規則にバスが揺れる音だけが耳に入る。
「なぁアンタ、上之宮玲菜だろ?」
急に一人の男の声が車内に響き渡った。当然誰もが注目する。
「無視するなよ?なぁ、覚えてるだろ俺のことをよ」
当の玲菜はちらっと男の顔を見ると、再び窓の外へと顔を向けた。
「んだよ、その態度は……」
男が立ち上がる。
「やめなよ」
「あぁ?お前には関係ないだろ?」
男は視線を玲菜から後部座席へと移した。
「関係あるよ!だって私達は同じ仲間じゃない!」
愛流もここぞとばかりに立ち上がる。
「仲間ぁ?ふざけるなよ。コイツと仲間になれる奴なんかいねぇよ!」
男は玲菜を指差す。
「いいか?コイツはな、裏切り者なんだよ!シミュレーションでコイツとチームを組んだんだが、開始早々一人で逃げ出しやがった!そんな奴と組めるのか?」
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