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玲菜は依然として黙ったままだった。
「あぁ!どうなんだよ!」
怒鳴り付けられ、愛流は少し泣きそうになっている。
「うぉーい、もう着くからおとなしく座ってろい。教官様に言い付けるぞ?」
騒ぎを沈めたのは意外にも運転手だった。
男も舌打ちをしながら仕方なく椅子に座り込んだ。
ほどなくしてバスは巨大な門の前に停止した。門の左右には壁が伸びており、中の様子はおろか、壁の端すら確認出来ない。
門が自動で開くと、バスはそのまま真っ直ぐ進む。既に道と呼べる道ではなく先ほどより揺れが酷い。
「ここが今日からお前ぇらの戦場だ。ここの敷地だけでバラックスの半分を占めてるんだとよ。どうだ?最高の場所だろ?」
バスは大きく揺れているにも関わらず、はっきりとした声で運転手が話す。
一人の乗客が感嘆の声を漏らした。ひかるもすぐに肌でそれを感じ取る。
目の前に大きくそびえ立つ建物がある。多くのトルーパー達が夢見る聖地だった。
バスが止まり、ドアが開く。
「さぁ、さっさと降りろ!夢にまで見たバラックスだぞ!」
運転手の掛け声に押されるように乗客達は足早に降りていく。
「ようこそ、新入生さん」
建物の前には優しそうな笑みを浮かべる白衣姿の女性が立っていた。
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