ζ―その世界の名は―ζ

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「…お疲れ様でした」 始業式を終え、店卸しのバイトをしていた無表情を貫いた少年は淡々と店の主に向かって挨拶をし、裏口から出て行く。 少年は夜遅い中、街を制服で歩いていたが平凡な外見と平均的な身長のためか、少年を振り返る者は誰もいない。 静かな住宅街にある少し古めの一軒家に少年は一人暮している。 両親は既に他界し、祖父に引き取られたが、高校に入ってすぐに両親の後を追うように祖父も亡くなった。 悲しいと思う事は無かったが寂しさに似た虚無感が現れ、私から表情を奪った。自分では笑ったり、悲しんだ表情を浮かべていたつもりだったが他人から見ると全く変わらない無表情だと言われている。 今日は何故か疲労感が身体を支配し軽く着替えてから敷いたままにしている布団に倒れ込み、襲い掛かる睡魔に身を委ね、意識を手放した。
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