一章

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   僕の幼稚園の頃からの専らの悩みは、その引越しの多さだった。    数える事、幼稚園で2回、小学校で4回。  そして中学生になった時、また1回目の転校を迎えた。  ほとんど2年に1回以上のペースで変わる学校には当然友達と呼べる友達なんて1人も居なかった。  慣れ親しんだ故郷なんて思い当たる場所も無く、小学生4年生の道徳の授業では「わたしの町」なんて作文の題を出され、どこの町を書けば良いのかと先生に尋ねて先生を困らせたものである。  言葉にも馴染めなかった。  どこの土地にも方言や訛りがあるもので、少しその土地に馴染んだかと思えばすぐに転校してしまっていた僕は、各地の方言が少しずつ混じった独特の言葉になってしまい、よく同級生にからかわれたものだった。  必死で標準語を身につけたものの今でもふとした拍子に変わった方言が出てしまう。  そもそも、もとが内気な性格だった僕は簡単にクラスに馴染む事も出来ず、どこの学校からだったかすっかりイジメの対象になった。  今思えば小学生の頃ほど子供の残酷さを味わった事はない。  
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