凍てつく悪魔の笑みを。

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「さあ、どうしますか?」 雪螺なりの譲歩か、はたまた更なる脅迫か。 最後の数字を紡ぐ前に、ユリに問いかけた。 手持ちぶさたなのか、腰に添えてある手は緩慢な動きでユリの体のラインをなぞっている。 「このっ…」 「ふふ…このままでは私に唇を奪われるだけでは済みませんよ」 どうしてあたしがこんな目に会わなきゃなんないのよっ…!! 心の中で嘆いたものの。 どちらにせよ、ユリにとってはハイリスクノーリターン。 ならばいっそ、とユリは男らしく腹をくくった。 机の上のココアの湯気は、もう発たなくなっていた。 くそっ…。 「…お、織原(オリハラ)ユリ、です…」 こんな腹黒悪魔にどうこうされるより、名前を言ってしまったほうが賢い選択…、と自分を無理やり納得させる。 だがその決意とは裏腹に、ドクドクと高鳴る心臓に比例して、ユリの声は震えた。 まるで頼りない。 自分らしくない声。 「いい子ですね、ユリ。これから暫く宜しくお願いします」 雪螺は冷たく笑った。 その感情を映さない瞳の奥に、ユリは少しの翳りを見た気がした。 。
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