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天気予報の通り、無駄にカラリと晴れた空は雲1つない快晴だ。
昨夜の衝撃的なハプニングのせいで、ユリの目の下には大きなクマが。
そして雪螺の右頬には明らかに、人の手形がついていた。
「いきなり叩くことはないでしょう?ユリ」
「朝私のベットに潜り込んできてたあんたが悪いってわかんないの」
「あんな固い床で寝られる訳がないでしょう」
「ちゃんと掛け布団と敷き布団あげたでしょっ!?寧ろ感謝しなさいよ!」
フライパンと菜箸をガチャガチャと大袈裟に鳴らしながら、ユリは無神経極まりない雪螺に向かって叫んだ。
そして腹の虫が鳴いた。
「っ…」
ユリは一瞬顔が熱くなったが、雪螺は気付いていない。
何事もないように後ろを向いて、ユリは小さいため息をついた。
こんなすっ飛んだ状況でもお腹がへるなんて…。
悪魔が1人落ちてきたところで、世界は揺らぎもせずただいつも通りの時を刻んでいる。
1人、の存在が、この世界にとってはどんなに小さなものか。
ユリは思い知らされたような気がした。
「…あ」
後ろを向いたついでに、冷蔵庫を開けて卵のパックを取り出したとき、ふと重大なことに気が付いた。
「ねぇ」
雪螺の方に向き直して、俯きがちだった視線を上に上げてみた。
黒いYシャツとズボンだった雪螺は、僅かの間に昨日と同じ格好になっている。
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