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こともなげにさらりと言ったユリを暫く凝視した雪螺は、堪えきれなくなったように吹き出した。
「ふ…くっ」
「な、何?なんで笑ってんの?」
ユリは温めたフライパンに卵を流し入れたことも忘れて慌てた。
またこの悪魔を楽しませるようなことを言ってしまったのだろうか。
だけどさっき言ったことは本心で、自分がいない間に腹が減ったと勝手に冷蔵庫なんかを漁られても困る。
と言うか堪えられない。
仮にも女子の一人暮らし、見られてはいけないものもある。
「…ああ、すみません。余りにも予想外の返事だったので」
「あ、そ…あ!?」
口許を手で覆ってどうにか笑いを抑えたらしい雪螺は、怪しい音をあげだしたユリの手元を指差した。
予想外ってなによ、とユリは思いつつ、雪螺の指につられるように視線を動かす。
声を上げてから、そのあと肩を落とした。
「私のオムレツ…」
オムレツ一つ分の卵がダメになり、仕方なく今日の朝食はスクランブルエッグと食パンになった。
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