16人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「なんですか、その格好は」
「は?」
ユリが慌ただしく制服に着替えて引き戸を開けると、目の前に雪螺が立っていた。
聞き耳立てるなんてなんつー悪趣味なやつ、と一瞬ユリは思ったが、雪螺のさっきの一言で全て吹っ飛んでしまった。
「なにって…制服だけど」
少々困惑しつつ答えた。
あまりに唐突すぎて嫌味も思いつかなかった。
最終確認をしようと雪螺を押し退けて洗面所へ行こうとすると、雪螺に二の腕を掴まれた。
一応手加減したのだろうか、力が入っていないように感じる。
掴まれた腕は全く動かないのだが。
「な、によ」
「それ、とって下さい」
「は?」
本日何度目かわからない、疑問符が頭に浮かぶ。
雪螺の顔を見るわけにもいかなくて、忙しくキョロキョロと目を動かすと、雪螺が鼻の上にある微かな重みを取り上げた。
中学から愛用してる黒縁の眼鏡。
「あ、ちょっと!?」
「あと髪もおろして」
もう訳がわからない。
しかもあと十分で家を出ないと、遅刻は確定する。
「ちょっ…止めてよ!」
。
最初のコメントを投稿しよう!