凍てつく悪魔の笑みを。

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まだ水が滴る髪をガシガシと乱暴にバスタオルで拭きながら、火照った頬を冷ますために窓を開けた。 秋の始まりの夜風は、心地よく風呂上がりの体を撫でていく。 「んー…?」 それほど建物の多くないこの方角は、月がよく見える。 いつもは綺麗な金色だが、今日は違った。 「なんか…あかい?」 誰もいない室内に、ユリの独り言が響く。 橙色に近い月は見たことがある。 でも、これは…。 「なんだか…気持ちワル…」 赤色、朱色、紅色…。 どう言っていいかわからないほど、あかい月。 頭に乗っけていた湿ったバスタオルを肩に羽織り、ユリは軽く身震いした。 体は冷えきっている。 「…ま、大したことじゃないよね」 自分を安心させるためそう呟き、開け放った窓を閉めようとした。 瞬間。 「え…」 強かに床に打ち付けた背中が痛い。 ユリの思考は飛んで、驚きの言葉しか出なかった。 ヒラヒラと黒い羽根が顔の横に数枚落ちた。 「え」 「…失礼」 ユリに覆い被さっていた影がゆっくり起きた。 穏やかな声を発した人の形をしたそれには、この世の人間にはあり得ないものがついている。 「羽根…」 「おや、冷静ですね」 。
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