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「俺はただの記憶を無くしたホームレスさ。助けて貰っておいて偉そうな態度をとるつもりはないよ。遠慮なんかしないでいい…兄弟喧嘩もそこまでだ。」
そう言って男は笑いながら棘を止めた。
「いや、違くて。」
柊はヒラヒラと手を降って否定する。
そして胸ポケットから小さい方手鏡を取り出し男の顔の正面に鏡を向けた。
そして、柊は自分自身の顔を指差し。
「この顔に見覚えはー?」
と聞いた。
「!!」
鏡に映るのは当然自分の顔。しかし鏡を挟んだ向こう側自分の顔があった。
それはつまり…
「そっくり…さん」
「頭、弱いの?」
冷めた柊の鋭いつっこみが入る。
「つまりさ…俺等が兄弟なんだよ。しかも、双子の。会いたかったぜ。お兄ちゃん♪」
「は…!?」
突然の柊の言葉に男は驚愕する。
覚えてはいない自分の弟が今自分の目の前にいる。
「偶然、じゃなくて必然的に俺等はアンタを探してたんだよ。」
ねー♪と柊は隣りに座る棘に抱き付く。
「た、探偵ですから。」
抱き付いてきた柊を引きはがしながら棘が答えた。
「行方知れずになった時から探してました…」
行方をくらましたのは約一か月前…
「どうして…。」
会社を止めた時も誰も気にとめてはくれなかった。
家族だと、教えて貰ったものにも「役立たずが」と縁を切られ見放された。
もう自分は一人だと思っていたのに。
「どうして…ですか。そんな質問がでることが悲しいですね。私達は兄弟ですから…兄弟のピンチにはかけつけますよ。どんな手を使っても。」
棘が男を頭を撫でながら答える。
「本当に…」
兄弟なのか、と聞こうとして男は口を閉じる。
そんな確認は必要ない。本当に兄弟じゃなかったにしろ、自分を知っていて自分を助けてくれた人間に言う言葉は否定の言葉ではない。
「ありがとな…」
男は一言そう言って笑った。
「必ず記憶は見つけます。だから…今は私達のそばいてください。棗…兄さん。」
そう言った後棘はコトンとベッドに崩れ落ちた。
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