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もう7時だ、帰らないと…』
「うん、わかった」
『じゃあ、また今度』
「うん…」
『またすぐ会えるよ』
「分かった……
じゃあ、またね」
日も落ち
辺りはすっかり闇の中
視力がよくない私は
細目で彼の背中を追う
走り出してしまいそうな足を
必死に抑えて
彼の背中を目で追う
不意に彼は振り向き
私に手を振った
それに応えたくて
めいいっぱい腕を広げて大きく手を振る
彼にしっかり見てほしくて
彼は坂を下る
彼の姿がみるみるうちに
坂に呑み込まれていく
ああ、彼が消えちゃう
やがて頭のてっぺんまで消えてしまう
ようやく私は手を振るのをやめる
見えづらい目を必死に凝らし
彼の背中を確認するも
もう何も見えない
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