『あ、

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ドアを開け、靴を脱ぎ、玄関にたどり着く その行程がとても長く感じられる 「もうご飯できてるよー」 「分かった」 でもすぐに食べには行かない 私はその足で すぐさま さっきまでいた部屋に戻る ドアを開ける 電気をつける 一歩足を踏み入れると 微かに香る彼 その香りに惹かれて 部屋に入っていく ベッドに座った この狭い部屋で唯一くつろげる空間 布団に顔を沈める 彼の香りと 消えそうな温かさ ずっとそうしていると 鼻も肌も慣れて 何も感じなくなる   ああ、彼が消えちゃう ふと 彼が頭に浮かぶ とたんに 抑えていたものが溢れだす それは止めどなく溢れ 顔を沈めている布団を湿らせる 顔を上げる 視界がぼやける 浮かんだ彼もぼやけていく    消えないで [すぐ会えるよ] また一週間ほど 会えなくなる 私にとっての一週間は まるで一年間 とても長く ひどく苦しい でも  
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