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「コイツはここで殺しておこうか」
そう言って彼女は懐からサバイバルナイフを取り出す。刃は所々欠け、雑に扱われてきた事を物語る。
それを、路地裏で腰を抜かしてしまった小肥りの男へ向ける。男からは、やはり慌てふためく様が見てとれた。
―――――なんて不様なんでしょう。……いや、しかし滑稽だ、面白い。
「ま、待て! 話が違うではないか! ワシは依頼主だぞ!」
「依頼主? 知らないよな、ブーン」
ナイフを握ったまま彼女はそう言って話しかけた。後ろに立っている、笑っているような顔の男―――僕、ブーンに。
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