894人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
「……そいつを生かしておいてもなんら僕らに得はないお」
「ま、待て! 金ならいくらでも積むから!」
「一つだけ言わせてもらうお」
猛り狂った鳧のように甲高い声で、依頼主は懇願する。隠し持っていた札束を、扇ぐようにちらつかせる。
それを見て呆れ返った素振りをして、僕は呟く。
「次は……お金がそのまま力になるような世界に生まれてくださいお」
そう吐いたが先か、血飛沫が鉄筋コンクリートのビルへ届いたが先か……不格好なサバイバルナイフはあっさりと心臓を貫き、そこからまだ綺麗なままの血を放出させる。
最初のコメントを投稿しよう!