#01-SILENCE

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「……そいつを生かしておいてもなんら僕らに得はないお」 「ま、待て! 金ならいくらでも積むから!」 「一つだけ言わせてもらうお」 猛り狂った鳧のように甲高い声で、依頼主は懇願する。隠し持っていた札束を、扇ぐようにちらつかせる。 それを見て呆れ返った素振りをして、僕は呟く。 「次は……お金がそのまま力になるような世界に生まれてくださいお」 そう吐いたが先か、血飛沫が鉄筋コンクリートのビルへ届いたが先か……不格好なサバイバルナイフはあっさりと心臓を貫き、そこからまだ綺麗なままの血を放出させる。
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