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息途絶えるまで、男は叫び続けた。声は誰にも届かないのに、助けを求めていた。
しばらくしてナイフを刺した彼女は、返り血を浴びたがそれには全く気を止めず、後ろでその様子をただ見ていた僕へと振り返る。
「ブーン、この仕事は慣れたかな?」
僕は答える。
「……この仕事を始めて、人間って色んな表情をするんだなぁって気付いたお。だから、まだ気に入ってますお」
「まだ、とは?」
「クー……未来の事なんて誰にもわからない。だから、だお」
「そうか」
クーは呟き、手際よく肉やら皮やらを分け、ビニル袋へと詰める。これを持ち帰り何をするワケではないが、家畜の餌程度にはなるであろう、そう思いながら、彼女は毎回人を殺した後はそれを一応持って帰るらしい。
ただ、やはり人一人分は少々重いらしく、男の身体の大半だと思われる黄色い脂肪の玉なんかは野犬用ということで置いてゆく。
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