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「……逃がすお」
「うん、それでいいな」
彼女は頷いた。
それから僕が、その間もずっと土下座を高橋名人がボタン連打するスピードで繰り出していた男の肩を再び叩く。
「早く行けお……じゃないと、明日の夕食に食べちゃうお?」
……冗談だけどね。流石に人肉は臭くて食えたモンじゃない。
「ヒィィィ、すみませんでしたぁぁぁ!」
僕の顔を見た彼は、土下座をやめ、すぐさま闇の中へ走り出す。その姿を、最後まで僕らは見ていた。
薄暗いし、顔は見られていないかな。しかし、見られていたとしても、さっきの彼の怯え様からすると、きっと通報なんてしないであろう。
彼が逃げた方向に、ビルの間を吹き抜ける風は血の臭いを運ぶ。
「いずれここにも警察が来る……その前に退散でもするお」
「そうだな」
残された血の海は黒く淀み、真実をその中へ深く隠していく。
――――また今日も上手くいかなかったなぁ……
そう思っていると、クーは黙って首を横に振った。
そう、それは、まだ迷いのある僕に対して、これは間違いではないとでも言うように。
―――――ブーンとクー、
裏社会に現れた若い二人はこう呼ばれていた。
―――――生かし屋。
( ^ω^)と 川 ゚ -゚)は
生かすようです
―――そしてまた夜が明けてゆく。
#01-SILENCE
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